絵画と散文のコラボ、ささやかな寓話、児童文学、犬や小猫のお話 

Walking in the pictures V-Part2

07  「 待ての響きに覚えあり。。」

 

上々

いや、なかなかに上々の朝。

珈琲の香り気持ちよく、

マーマレードの甘みも心地よく。

 

今年も初日を迎えられて何より。。

腕に覚えありと言いたいところだが、

錆を落とすのに、しばしかかるかもしれぬ。

それなりに迷惑をかけるかもしれぬが、

よろしゅう、よろしゅう頼みます。

 

森や草原を横断し、山や川を越え、

大地を踏破しては、追いかける。

 

それも、よき相棒に恵まれればこそ

 

狩猟開襟。

初日のめでたき朝にこそ、君に伝えたい。

 

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今年もよろしゅう頼みます、と。

 

そして、

言葉には表と裏があると言うこと、

ご理解いただきたい。

 

時には、

まて。。

「待て!」

と聞こえるかもしれぬが、

心の中では、

「待ってください」

と、頼んでおる。

 

けたたましくも、

不遜な言葉を使いがちな自分なれど、

そこのところは、どうかご容赦願いたい。

 

言葉には裏も表もあること故、

いろいろ不快を与えるかもしれぬが、

そこは相棒のよしみと、寛大な。。

 

ちと、

言葉が足らぬかもしれぬが、そういうことじゃ。

 

 

それでは、

今年もよろしくお願いいたしますぞ、相棒。

 

 

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Anna Ancher - 1908 Breakfast before the Hunt (michael Ancher) -800.

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Anna Ancher (1859~1935) Danish painter

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08  「 Peek a boo  いないいないばあ~ 」

 

見上げるだけ

見つめるだけ

それだけでいいのだから、不思議な時間。

 

きっといいことがある。

嬉しくなることが起こるんだ。

 

覚えているもんね。

忘れたりはしないさ。

 

だから

じっと見つめていよう

見上げていよう。

 

ちょっと

見上げすぎて

首が疲れちゃったけれど。。

 

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でも、大丈夫。

ちゃんと待っているから、

難しい言葉は苦手だけれど。。

 

その布きれ、おしゃれで素敵だね。

僕にもきっと似合うと思うんだ。

 

それとも、勘違い?

 

それでもいいさ、

僕はずっとここにいるから、

何があっても。

 

わかっているよね。

そのことは信じてほしいんだ。

 

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Briton-riviere-fidelity-800.

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Briton Riviere (1840~1920) British painter

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09  「  風の詩  」

 

思い出せる、

思い出せないのかしら

 

数えれる、

数えれないものかも

 

あの歌詞は2番の始まり

それとも3番だったかしら

おばあちゃんに習ったのよ

 

 

いろんなことを考えて

でも、考える前に感じているの

 

 

時間だけが流れていく

 

見えないのに

感じるから不思議よね

 

 

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あなたたちがいるから

わたしは今こうしているの

 

見えないけれど

あなたたちがそっとお手伝いしてくれるから

 

いくつもあるのね

 

数えたことはないけれど

見えないものって

 

でも聞こえてくるの

 

こんにちは、ひさしぶり、って

 

不思議ね

 

おばあちゃんの笑い声を思い出すことができるなんて

 

いつも明るいおばあちゃんだった。

 

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好きなものがいくつもいくつもあって

少しずつ私たちにおすそ分けしてくれた

 

そうそう、新しいジャガイモさんが取れましたよって、

木箱でどっさり送ってくれた。

 

真っ白な冬が好きだったわ。

 

 

いつかお話をしてくれたの、

雪虫のお話を。

 

寒い寒い、でも輝くように、真っ白な雪の朝に。。

フワフワと飛んでくるの。

女の子の手のひらにも留まってくれる。

 

悲しいのよ、雪虫は。。

 

手のひらの温もりの中で、

溶けながら息絶えるの。。

 

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私は手のひらに留まった雪虫を考えていると、

泣きそうになった。

 

なぜ、どうして?

そんな顔をしておばあちゃんをじっと見上げたわ。

 

おばあちゃんは、私の手をにぎりながら、

そっと言ったの。

 

 

わからないことは、たくさんあるのよ。

でも一番大事なことは、きっとわかる。。

 

ほら感じない、聞こえない?

 

あなたの手でよかった。

あたたかったわ。

とても、とってもありがとうって。。

 

雪虫さんがきっとあなたにお礼を言っている。。

 

 

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Francois Alfred Delobbe-700.

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Francois Alfred Delobbe (1835~1920) French painter

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10  「  救いなきもの  」

 

名前のない馬

名を忘れた旅人

名を捨てた吟遊詩人

 

名前の裏と側面には、ゆかしきものいくつかあれど。。

 

 

興ざめの最たるは、

昨夜の夜会かもしれぬ。

 

とあるピアノ弾き現れて、

演奏を2曲、3曲と続けた。

 

腕に覚えを無くしたか、

興が乗らぬのか、

青ざめた表情に、

チラチラとくすぶる怒りを、冷たい瞳に浮かべて。。

刺げ多き不興を旋律にちりばめ、聴衆に届け続けた。

 

 

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さてさて 

忘れがたきは、夜会の残渣。

 

名も消したきピアノ弾きの、悪意のばらまき。。

鍵盤の耐えがたき悲鳴の幾千が、耳朶に残る。

 

まばらな拍手に追われ、彼女の退場するは、

お仕着せの一礼に相応しくもあり。。

 

 

それはさておき、わが身の不思議さよ。

 

さて

さても

幻とうつつの鬩ぎ合いか、この地は。。

 

いずれかに

加担する義理はないにしろ

境界を演じるなどという野暮は避けたいもの。。

 

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誰がためにか

無明の旋律をお届けしよう。

 

名づけるいとまもなく

湧きいでし主題

鎮魂の余韻を、弦に沈めてゆかん。

 

 

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Antonio Ambrogio Alciati -800.

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Antonio Ambrogio Alciati (1878~1929) Italian painter

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11  「  Madonna    」

 

黄昏に目覚めしと巷に言う。

夜明けにまぶた閉じると古に聴く

 

光輪、さほどの友とせず

誓言、胸にかき抱くこともなく

祝福の木霊もいずこにか消えゆく

 

さてもなき 縁はなく

幸もなく 慈しみはうすきかな

 

世界に乙女あり

光と闇の両界を行き来することひさしく

数えることあたわず

 

 

いつしか灰色の乙女と呼ばれる

 

行く末を無くした人々の、よりどころとなりて、

迷い人とともに、薄暮にて寄り添う

 

 

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とある陰鬱なる世紀に

乙女と邂逅せしひとりの詩人、冠を献じて、

いくつかの詩篇を残さん

 

哀れなることに、

大半は時と光の浸食に絶えず、

砂の風紋にて世界を滅流す

 

明白なる一遍は、彼の霊園のうちにあり

エピタフに残されし言葉

遺言により刻まれし、一行詩

 

「光があきらめし命 闇のうてなにて復活を歌う」

 

 

  「Lady of  Darkness 」

 

  後の人々、

  レリーフに浮かびし闇色の乙女を、

     斯様に呼びて敬愛す

 

 

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Ambrogio Alciati (1878 – 1929) -Madonna-800.

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Antonio Ambrogio Alciati (1878~1929) Italian painter

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12  「  三者択一  」

 

確率の計算をしてみようか。

いやいや、野暮は言いっこなし。

大人の蒙昧的判断で切り抜けてみよう。

 

そもそもだ。

幻と夢を区分することのメリットは、

いずこにか存在し、

誰のためにあるのか、ということだ。

 

どちらに優越を与えるのか、

いずれに比喩的超越を標榜させるのか。。

 

こむずかしいことはさておいて、

少しばかり距離の旅に出てみようか。

 

俯瞰するだけ、十分なところまで遠ざかってしまうと、

さほどの差は、無に近いものになり、

理の闇に吸い込まれていくのだ。

 

 

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そこは果ての果てとでも言うべき場所。

 

そんな久遠の果てには

可笑しな立て看板があるらしい。

 

見た。

見ていない。

見たくない。

 

覚えている。

覚えていない。

覚えたくない。

 

 

さてさて、

世迷いの果てなんて、その程度のもの。

 

夢と幻にいたっては、

過去と今と未来

どこで出会うのか それくらいが関の山さ。。

 

 

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最近、耳にしたんだけれど、

酔狂な輩がいてね。

看板の足元をきれいに掃除して、

土台に彫ってある文字を見つけたらしい。

 

そして彼の証言するところでは。。

 

 

「よくこんな場所まで来てくれた。

 気をつけて帰ってくれたまえ。

 忘れるには遠すぎる、美しすぎる距離なのだから 」

 

って、書いてあったらしい。

 

 

どうも眉唾だけれどね。

 

 

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Otakar Lebeda (1877-1901)-800.

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Otakar Lebeda (1877~1901) Czech painter

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13  「  夜明珠  yameisyu    」

 

 

Fate is  kind

She bring  to  those  who  love

The sweet  fulfillment  of

Their secret  longing 

 

 

Like a  bolt  out  of  the  blue

Fate steps  in  and  sees  you  through

     .

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     .

 

あら、嬉しい。

久しぶりなのに、

最後までちゃんと。。

 

ジミニー

ジミニー、クリケット

 

彼は今頃どこにいるのかしら?

 

 

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そうそう。

夜叉の国あたりで彼を見かけたなんて、誰かが。。

風のうわさにしても、ふ~んだわ。

 

 

でも、いつか、玄関に彼が。。

 

あの歌を口ずさみながら、颯爽と現れて。

それから、こう言うの。

 

「は~い、ごきげんよう。

 これが、あの夜明珠ですよ、

 お待たせいたしました。」 って。

 

 

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Armand Point -700.

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Armand Point (1860~1932) French painter

 

 

 14    「  意気と情熱  」

 

 

モットー、口癖、18番とでも呼ぼうか。。

節目の時になると、

この言葉をつぶやく人がいた。

 

「大事だね、うん。人生は意気と情熱さ。」

 

いい時にも、悪い時にでもある。

 

ある意味、公平。

どちらの時でも、そう呟いているのだから。

 

 

おりおりに残してくれた言葉を、思い出すことがある。

 

30年以上前のことだが、こんなことがあった。

ある人のことを1時間ほど語ると、

彼はこう答えてくれた。

「よき人、善人が幸せになるとは限らないよ。。」

 

 

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振り返ってみると、

彼らしい言葉がいくつか蘇る。

 

 

それはさておきである。

 

「始まり」

「終わり」

「冬の始まり」

「始まりの冬」

「最終楽章」

「冬の終わり」

 

彼だったら

「冬の始まり」を選ぶような気がするのだ。

 

「これだね」と笑いながら、そう言いそうな。。

 

意気と情熱に、こだわった彼は、

もう一つ好きな言葉があった。

 

 

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それを考察すると、

これがぴったしかもしれない。

 

というわけで、

 

「冬、希望の始まり」で、どうだろうか?

 

 

「終わりを目指すのが、生物的、時間的本質なのだが、

 始まりが年年歳歳、連続してもいいじゃあないか、

 ましてや、希望だからね。。」

 

笑いとともに、

明るい彼の声が聞こえてきたような気がする。。

 

 

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Vilhelms Purvitis - Winter -800.

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Vilhelms Purvitis (1872~1945) Latvian painter

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