01 「 Little freedom 」
それは、尊いのでしょうか?
彷徨いながら探すに値する。。
喪失を対価に、守らねばいけないもの?
道程のかたわら
葉を落とし折れ曲がりながら、彼の地を指さす枝々。
忘却の夕まずめ、夢の片隅で
黄金色に染まり添い寝する、希望の影と祈りの残響。
もう一つ加えるなんて夢想はしません。
新しく生み出すことも。
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でも、もしもです。
許されることなら、
手のひらを貸していただけますか。
そして持ち上げてくださるなら
浮かんだ、その世界に
一対の翼が与えられるかもしれません。
それが、私の委ねた、
自由という名の希望なのですから。
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William Orpen (1878~1931) Irish painter
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02 「 こんにちわ .. Hello , Goodbye 」
さようなら。
またね。
それとも、ありがとうが、いいのかな。。
来週、街を出ていくのさ。
きれいだね、うん、ありがとう。
どこで見つけたの?
家の都合ってやつさ。
詳しくは知らないんだ。
さようならって、意味わかる?
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春や夏が通り過ぎて、秋が来るよね。
それから冷たい風が
チラチラと輝くガラス細工を運んでくる。
いろんな人に会えるのかな。
たくさんの人に会えるらしい。
大きな街だから、きっとそうなるのさ。
ありがとうだね、やっぱり。
あのね、いつか僕は帰ってくるよ。
時間という不思議なものがあるんだ。
今日、特別な時間が動き始めた気がするのさ。
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もう戻れない旅が始まる。。
時計って知っているよね。
いつも、毎時間、毎日、
同じ向きにクルクル回るあれさ。
逆に回しても、指で針を止めていても、
止まらないんだ、時間は。
いつか、いつか君は忘れてしまう。
来年、来月かもしれないけれど。。きっと確実に。
だから、ありがとうかな。
さよならはなしにしよう。
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君は僕の時間の始まり。
たった今、そう決めたのさ。
ここから僕の旅が始まるんだ。
えっ、僕にかい?ありがとう。
とってもきれいだね。すごくうれしいよ。
じゃあ、またね。
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Erik Werenskiold (1855~1938) Norwegian painter
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03 「 8番目の不思議 Sense of wonder 」
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ピラミッド、ピサの斜塔、
サルガッソー海の怪しき霧、オガーネンの魔窟、
チェネロッティーの逆さ井戸。。
7つの不思議は、いくつもある。
どんな組み合わせ、パターンでも可能だからね。
ところで、
君は自分だけの7つを探したことはないかい?
酔狂な趣味はないし、暇もない?
ごもっともな意見だ。
僕もそうありたいと思うのだが、
ときどき羽目を外してしまう。
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欲張りなことは戒められるべきなのだが。。
一皿、もう一杯、所望と、
精神の貧困ゆえ、煩悩が呟きを
放棄してくれないこともある。
無粋なことは、承知の上で、付け加えてみたい。
安息日の後に、新しい曜日を付け加えるのではないから
大目に見てもらえることを願いながら。
常在、無間を結ぶ、微弱な鼓動。
夢と現実の境界、具象と抽象の接触面が
美しく揺らぎながら、乱れてゆく。
崩壊と再誕の刻を、
僕は8番目の不思議に指名する。
馥郁たる幻想の開襟。
仄かに蒼さめては広がる、
混沌の輪環、と呼ばれるものを。
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Csontvary Kosztka Tivadar(1853~1919) Hungarian painter
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04 「 イエローマジック 」
きれいな満月
お祭りの夜だし、最高かな。。
楽しい音楽が街中に鳴り響く。
一粒一粒の音色が、黄色い真珠になって、
石畳や、漆喰の壁にちりばめられていく。
こぼれ落ちないように、
小さなハンマーでコツンコツンとはめ込んで。。
真珠たちにひびが入らないように、優しくね。
僕は歌わないよ。
だってへたくそだから。
みんなの声は、きれいに透き通っている。
街中が聞き惚れるのさ。
恋のはじまりを歌えば、
窓の明かりがほんのりと輝き始めて。。
神様へのありがとうを歌えば、
お星さまがキラキラと笑い出す。
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僕は歌えないけれど。。
真っ白い歯を見せて、笑顔を返してあげる。
そうさ、歌声の代わりにね。
気持ちよくみんなが歌えるように、
軽~くバチを握って。。
相棒の笛のメロディーが、
気持ちよくスキップできるように。
夜の街のリズムを刻んでいく。
街中がイエローパール、
僕の心の中まで、真珠があふれていく。
黄色いお月さまって大好きさ。
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Nikiforos Lytras (1832~1904) Greek painter
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05 「 Non Title 」
「考えてもいない?
それともこのままでほったらかしなのかな。。」
「このままさ、友よ。
考えた末とまではいかないけど、
それなりに妥協点を探ったってことさ。」
「それは君の詭弁とも言えるし、
どこか無責任にも聞こえてしまう。
特別な良識や常識を、君には期待しないけど。。」
「失敬千万な奴だな、君は。
日ごろの厚情に免じて咎めはしないけれど。
このことに関しては、あまり議論したくないのさ。」
「考え直すつもりはないのかい?
風景や抽象ならいざしらず。。
いや、悪かった。口をはさむことではないな。
言い過ぎてしまったようだ、
虫の居所が悪かったのかも。。
昼食に飲んだまずいワインのせいかもしれない。
どうか謝罪を受け入れてくれたまえ。。」
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男二人は、右手を伸ばして和解するかもしれません。
仮初の仲直りではないでしょう。。
窓辺に立ち、友の後姿を見送りながら
男はつぶやいています。
自分の家や、愛、友情に名前をつけたりするかい?
僕はそんな趣味は持ち合わせていないのさ。
強いて言うなら、野暮なことは嫌いでね。
例えばだ。。数十年後、どこかの国の誰かが、
いろんなタイトルをつけてくれるのさ。
「 Madam X 」 「The painter and his model..」
なんてね。
陳腐だと思わないかい? わが友よ。
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Alfred Stevens (1823~1906) Belgian painter
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06 「 同行二人 」
取るに足らないことなんだけれど、
意外と大事なことってある。
そう、俗に言う「盲点の囁き」
いや、違った。「移動する盲点」かな?
まあ、どちらでもいいんだけれど。。
人間には、二本の手しかない。
僕もそうだし、君もそう。
「手が使えることによって、我々は進化した。。
これは直立歩行の誉れというものである。」
ビーザンヌ先生のキンキン声の説明ではないけれど、
確かにそうかもしれない。
くれぐれも忘れないでくれ、
勘違いしないでくれ。
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僕は実は喜んでいるんだ。
2度目ではないよ。この3度目の、街角のミラクルを。
嬉しいのに、
嬉しくない振りをしなきゃいけないこともある。
それに加えて、だ。
いくつか解析に値することがあってね。
ある人が怒っているように見えるってこと。
自分の快適な空間を確保すると、
ある人の安全圏が侵略されて、迷惑をかけてしまう。
適切な友好関係の必要性はどのくらい。。
まあそれは、必然の悩みとして。。
そう、前回も、前々回も気づいていたんだ。
何故右手を使うんだろう?何故左手じゃないのか?
そうだね。
これは新しい命題なんだ。
ふっと浮かんでくるのさ。
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あの有名なことわざ??
防御線のもっと、遙か上かな??
そう、左手の究極のディフェンス。
「鉄の肘」大作戦
侵略と友好は紙一重。
不作法と図々しさは。。
くれぐれも忘れないで欲しい。
僕は嬉しいのさ。
そして,とても困っているってことを。
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Frere Pierre Edouard (1819~1886) French painter
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